1. 美容へのこだわりが皆無な彼氏
こんな私でも彼氏がいた時期がある。彼氏「S」だ。 身体を動かすことが好きな活発系の人間だった。ゲイの中にはボディソープや洗顔フォームなどに強いこだわりを持つ人も珍しくないが、Sは真逆であまり興味を示さなかった。ドラッグストアで安くなっているものを適当に買うだけ。洗顔フォームは購入すらしていないし、使っていない。リンスやコンディショナーもない。ドライヤーすら使わないという、なかなかにワイルドな仕様だった。
2. ガタガタの指先と、得体のしれないイボ
それ自体は個人の自由なので構わないが、彼には悪い癖があった。指先の皮膚や爪を噛んだり、剥いたりしてしまうのだ。 爪切りは基本的に使わない。すべてガリガリやって剥いているのだ。おかげで指先は常にガタガタ。荒れた皮膚の隙間に汚れが入り込み、全体的に黒ずんでいる。おまけに皮膚が硬くなり、なんなら得体の知れないイボまでできてデカくなっていた。

3. 痛みが勝る夜の営みと「レス」への突入
ここからは少しシモの話になるので、苦手な方はページを閉じていただくのがいいかもしれない。
Sは”彼氏”なので、特に最初の頃は夜の行為に及ぶこともあった。その際、デリケートな部分を彼の”その指”で愛でられるわけだが‥これが痛いのである。 ガタガタで硬くザラザラした、しかも黒ずみのあるその指で擦られるのだから、自分のデリケート部分は恐らく細かい傷になっていたのだと思う。傷のせいかバイキンのせいかは定かではないが、行為のあとに赤く腫れるようになった。これは無理‥気持ちよさよりも痛みが完全に勝り、行為そのものが億劫になった。Sがもともと性には淡白だったことも重なり、付き合って半年後くらいには見事な「レス」状態になった。

4. 唾液のついた指と、限界を迎えた衛生観念
営み自体はレスになり、自分からも”その気”が薄れたのでもういいのだが、問題は日常のスキンシップである。 彼は無意識に指先を口に入れ、爪や皮を歯で噛み切っている。そして、その唾液がついた(乾いているかもしれないが)黒ずんだガタガタの指で、平然と手をつないだり、私の顔を触って撫でてきたりするのだ。 本気でやめてほしかった(←潔癖すぎるわけではないと思うのだが‥)。普通に吹き出物ができそうで、撫でられた直後に顔を拭き取りたかった。でも一応彼氏だし「触らないで」とは言い出しづらい。
幼少期、親からは指を口の中に入れないようしつけをされたことを思い出した。指先についた雑菌が体内に入り病気になったり、唾液がついた指も臭くなる。きっとここにも雑菌が繁殖しているのだろう‥というイメージが刷り込まれていて、唾液がついたSの指は”汚れたもの”という認識が強くなっていた。
5. 本気のクレームと、まさかの「ジェルネイル」
最初は我慢していたが、一度気になりだすと感情に蓋をしきれない。苛立ちが勝りはじめ、少しづつだが指摘するようになった。爪を短くしたければ爪切りを使うように言った。「見た目も衛生的にも良くない。本当に、本気で受け入れられない」ということも伝え続けた。
何ヶ月も言い続けた結果、完全に癖になっていてやめられない彼も、彼なりに対策を講じてきた。まずは皮膚科の受診。指先のイボについては、医者が言うにはよくある感染性のものだったらしく、適切な処置で徐々に落ち着いてきた。 やっぱりあのままにして触られ続けたら、わたしにも感染していたかもしれないじゃないか。
そして残るはガタガタの指と爪。
ある日、彼の爪がツヤツヤと輝いていた。「あれ、なに、どうしたの?」と聞くと、爪や指をガリガリ削ってしまう癖がなかなか抜けないため、物理的に削れないようにするという対策をしてきたのだと言う。まさかの「ジェルネイル」である。本物の爪よりも硬いから、ガリガリしても削れないのだという。

6. まとめ
うん、なるほどね。物理的に防御したら確実よね、と感心したし、斜め上の対策をしてきて「コイツ面白いな」とも思った。ただ、マット加工も選べたらしいのだが、彼の手触りの好みであえてツヤツヤのコーティングを選んだらしく、「そーじゃない」感がどうしても拭えなかった。個人的な希望としては、せめてマット加工にしておいてほしかったところだ。 そして悲しいかな、そのジェルネイルも永遠ではない。やがて割れたり剥げたりして、結局指先は再び汚れていった。キレイを維持するというのは、そう簡単なことではないようだ。


コメント