やっぱり外資系企業は「横文字」だらけ。

仕事のこと

1. 外資系企業に入社した実感

前職のケータイショップから念願の転職を果たし、広く知られた外資系企業に入社することができた。とはいえ、私の勤務地は都心のおしゃれなオフィスなどではなく、郊外の巨大な物流倉庫だ。倉庫内は徹底的に整理整頓はされているものの、見渡す限り無機質な空間が広がっている。

それでも、お馴染みの「あのロゴ」が描かれたダンボール箱を現場で目にした時、「本当にこの会社の従業員になったんだな」と感慨深いものがあった。

2. 横文字の洗礼

入社して最初に直面した壁は、業務の難易度ではなく「言葉」だった。 専門用語、社内独自の略語、そして何より外資系企業特有の「英単語の多用」である。

朝礼で、ミーティングで、日常のメールで…いたるところで当たり前のように横文字が飛び交う。 「◯◯イシューについて報告します」「このタスクのデューはいつ?」「これは◯◯さんにアサインしたので」
※イシュー(Issue):課題、問題点、案件
※デュー(Due):期限、締め切り、納期
※アサイン(Assign):担当、割り当て、担当者

前職のケータイショップも自分自身も、決して意識が高い部類ではなく、少なくとも前職では耳にしなかった単語だらけだった。よくビジネスの場で横文字を使いまくる人を「意識高い系」なんてイジったりするが、あんなのはまだ可愛いもので、弊社はもっとひどい。ある程度英語ができる人なら意味が通じるのだろうが、英語力が皆無な自分にとっては、本当に「詰んだ」と思った。こんなにも横文字が並ぶ環境に身を置いたことなどなく、最初は「この人たち、一体何語を喋っているんだ?」と本気で戸惑った。

メールの文面も、普通の日本語の中に英単語が平然と混ざっている。せめてカタカナで書いてくれればまだ読みやすいものを、しっかりアルファベットで表記される。このルー語のような社内公用語は、精神を削る最初のハードルだった。

3. 「横文字環境」に慣れるまで

「言葉がわからない」と嘆いていても仕事は進まない。英語ができない私が、この横文字だらけの環境で生き残るために実践したことは至ってシンプルだ。

意味が分かった言葉はとにかくメモする
社内には一応「用語集」なるものが用意されていて、基本的な単語や略語は網羅されていた。しかし、部署が変われば飛び交う単語もガラリと変わる。結局のところ、現場で新しく出てきた言葉はその場その場でメモを取り、自分の中で知識をアップデートし続けるしかなかった。

本当に超基本的なところだが、結局のところこれしかなかった。一方で自分自身は「日本人スタイル」を貫こうと、意味を理解できるようになってからも日本語の中に英単語や略語を混ぜ込むようなメールやチャットは作らず、誰にでも伝わる平易で正しい日本語で発信するようにしていた。誰も得をしないささやかな抵抗であった。何に、何故抵抗したかったのかは今となっては記憶にない。

4. あれから10年、環境はというものは

「自分は染まらない」と心に決め、平易な日本語を使うささやかな抵抗をしてから10年の月日が流れた。現在、日常のメールやチャットを打つ際、ごく自然に、息をするように横文字を混ぜ込んでいる。もちろんカタカナ・アルファベット混じりで、だ。単語のみ投下する場合もある。

「このプロジェクトのPOC誰だっけ?」「これの件はPendingで」「(頼まれごと等に対し)Done!」
※POC(Point of Contact):連絡窓口、担当者
※Pending:未決、保留中、処理待ち
※Approved:承認済
※Done:完了

この環境に長く居続けた結果、業務上の概念と英単語が脳内で結びついてしまい、むしろ「日本語で何と表現するのが適切か」がパッと出てこなくなった。ささやかな抵抗はどこへやら、しっかりダークサイドに飲まれた。

5. とは言え、やはり本物の「英語」はできたほうがいい

英語力ゼロでもなんとかなる…とは言え、やはり英語はできたほうがいいに決まっている。社内での活躍の幅が段違いだ。

部門によっては海外とのやりとりも多く、英語ができることが大前提の部署もある。私がいるような比較的現場に近い部門なら英語ができなくてもなんとか大丈夫だが、部門を問わずジョブレベル(役職)が上がるにつれて英語力が求められる傾向にある。さらに近年は組織改編の波もあり、現場レベルでも以前より英語が求められる空気は確実に強まっているように感じる。

だからこそ、英語が話せない自分は、部署異動の打診や何かしらのプロジェクトの声がけがあった時、真っ先に「ちなみに、英語話せなくても大丈夫ですか?」と情けない確認をしなければならない。

日本法人とはいえ外資系なので、ちょいちょい日本語が話せない人もいるし、全社向けの資料やメールが英語だけということも少なくない。文章であれば、イマドキは社内のAIツールに「日本語にして」と依頼すればわかりやすくまとめてくれるがリアルタイムの「会話」となるとそうもいかない。

Zoomミーティング等で機械翻訳の字幕が出せる場面もあるが、ぶっちゃけ何を言っているか分からないことが8割だ。ニュアンスすら掴めないことも少なくない。仮に翻訳ツール等で意味が掴めたとしても、こちらから発信する(喋る)ことはできない。せいぜい、裏で翻訳ツールを使って作った英文を、そっとチャット欄に投下するのが関の山である。英語が話せないからだ。ちょっとかじっただけのルー語だけでは太刀打ちできない。

これが「対面」での会話となると完全に終了だ。そういう場面では静かにその場を離れるか、そもそも近寄らないようにして物理的にやり過ごしている。

6. まとめ

外資系企業で多用される横文字や英単語は、最初は外国語のように聞こえるかもしれない。しかし、結局のところそれは、その組織を円滑に回すための「方言」に過ぎない。

英語ができないからといって萎縮する必要はない。わからない言葉は調べ、テクノロジーに頼り、英会話の壁には近寄らずに物理的に逃げる。その現実的な割り切りと慣れさえあれば、英語力ゼロのおっさんでも外資系で生き残ることは十分可能だ。10年も経てば意識高い系の横文字使いくらいにはなれる。安心してほしい。

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